筆 蛭川登夫
『歯科と食育について』
昨今「食」のあり方が大きく問われています。心豊かで健康的な生活を送るためには、知育、体育、徳育に加えて、それ以上に「食育」が重要な位置づけになっています。
「食育」という言葉のルーツは以外に古く、明治31年より使われてきましたが、最近の食生活の崩壊、また咬む事の大切さから、クローズアップされるようになりました。
「身体の健康はお口から」「食は健康の源」と言われる様に、咬む事と健康には密接な関係があります。
古くから30回以上はよく咬んで食べましょう。と言われてきました。しかし、最近はあまり咬まずに、かつ軟らかい食品を好んで食べる傾向があり、顎の発達、歯並びに悪影響を及ぼしています。これが全身にも影響し、ストレス、頭痛、肩こり、目まい、口呼吸による疾病の併発等までも引き起こす場合もあります。良く咬んで食べる子ほど、いじめっ子、いじめられっ子、情緒不安定児も少ないという調査結果もあります。
また、虫歯・歯周病や残っている歯の本数が、咬む力や咀嚼能率に大きく関与しています。良く咬めることにより唾液の分泌を促進し、様々な病気の抵抗にも役立っています。脳卒中や心筋梗塞にかかるリスクに影響がある、というデータもあります。脳の発達や運動能力・学力にまで関係があることも分かってきました。
「食」は生きるうえで最も必要なことであり、その中でお口の健康が身体や寿命にまで、また心の面にも大きく関わってきています。
我々歯科医師も家庭、学校、行政等と連携し、口腔衛生活動を通じて「食」に対する意識の向上を目指していきます。
生きる事は「命をいただくこと」であるという事に感謝し、健康で実り豊かな人生を歩んでいきたいものです。