高齢者の歯科治療について

  筆 堀 愛美子

          「高齢者への歯科治療について」
 

昨今、高齢者の口腔衛生は全身状態にも大きな影響を及ぼすと言われており、健全な生活を送るためにも‘口腔の健康維持増進’が重要視されています。
高齢者の歯科治療の問題点としては、高血圧や糖尿病、心疾患など、全身疾患が増すごとに服用する薬の量などが増え、通常の歯科治療が困難になる場合があることです。そのほかにも、虫歯や歯周病の進行などにより歯を失い、広範囲の治療が必要となる場合があります。
厚生労働省により6年ごとに行われている歯科疾患実態調査では、平成17年の時点で、80歳の1人平均残存歯数は9.8本、20本以上歯の残っている者の割合は24.1%と発表されており、以前に比べると増加傾向にあります。しかし、よく噛めず楽しい食事が出来なくなっている高齢者は、まだまだ多くみられます。
口腔衛生状態の不良は、歯以外にも問題が指摘されており、誤嚥性肺炎などがあります。高齢になるにつれ、飲み込む機能や反射が低下し、口腔内の細菌が肺に誤って入り込み、肺炎を引き起こしてしまうもので、年々増加しています。
誤嚥性肺炎は、寝たきりで経口で食事を取っていなくても起こりうるもので、長期間の発熱の原因にもなっており、口腔ケアにより予防する対策がとられつつあります。
 高齢社会に入った現在では、このような状態は、誰の身近にでも起こりうる問題です。
口腔衛生状態を良好に保つことは、虫歯、歯周病、誤嚥性肺炎などを予防することに効果があることが証明されています。
今後も楽しい食生活を送るために、今ある歯を大切にし、できるだけ治療しなくてもいい状態に保つことが大切だと考えられます。

 一度、お口の掃除がてら、歯科検診などに行かれてはいかがでしょうか。